数年にわたる大掛かりな議論と延期を経て、第2次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive 2:MiFID 2)はついに2018年1月に施行される予定です。MiFID 2の狙いは、欧州における金融商品取引の効率性と透明性を向上させ、最終的に投資家保護を強化することにあります。これは間違いなく、グローバルな運用機関が今年直面する最も複雑な規制と言えるでしょう。

 

施行まで1年を切った今、運用機関は準備を確実に整えるために、取引報告、手数料の透明性、金融商品ガバナンスという3つの重要分野に注力しなければなりません。

 

取引報告

MiFID 2における最も大きな業務上の変化は、取引報告の責任がブローカーから運用機関に移ることです。今や欧州市場インフラ規則(EMIR)、証券金融取引規則、米金融規制改革法(ドッド・フランク法)の要件が含まれ、拡大する一方の運用機関の報告負担は、この新たな報告義務によってさらに増大します。推定1,500万の金融商品がMiFID 2の対象となり、1つの取引について81を超える必要データ項目の報告が義務付けられるため、取引報告の要件を満たすには大規模なシステム開発が必要になるでしょう。新たな報告義務への対応方法を決定するに当たって、運用機関には次の3つの選択肢があります。

 

  1. 自社でソリューションを構築する
  2. 第三者のソリューションを購入する
  3. 取引報告を代行する認可業者である認可報告メカニズム(Approved Reporting Mechanism、ARM)に外部委託する

 

最終的に、運用機関の判断は自社の組織能力とシステム戦略に左右されるでしょう。運用機関はアウトソーシングを選択した場合、報告の正確性に対して責任を負い、適切な監督を行う必要があります。運用機関はまだ判断を下していなければ、2018年1月の期限を前に十分なテスト期間を確保するために、早めに最終判断を下す必要があるでしょう。

 

手数料の分離

MiFID 2には、手数料の開示に関していくつかの強化策が含まれています。中でも、MiFID 2は独立したアドバイザーへの仲介手数料やリベートの支払いを明確に禁止しています。自社のファンドに関して外部のアドバイザーや販売業者を利用している運用機関は、新たな規則に準拠するために、既存の商業上の取り決めを検証し、必要に応じてそれを修正する必要があります。新たな手数料体系に対応する目的で、運用機関は新たなファンド・シェアクラスの設定を検討することも可能です。

 

現在、取引執行費用と投資リサーチ費用は一般的に1つの手数料にまとめられています。MiFID 2の下では、これらの費用を分離して個別に開示しなければなりません。この分離のために、運用機関はリサーチ費用の計上方法を決定する必要があります。1つの選択肢は、「リサーチ費用支払い勘定(Research Payment Accounts)」を設け、発生したリサーチ費用をその勘定にまとめた後、ファンドがリサーチ提供者にリサーチ費用を支払うことです。別の選択肢は、リサーチ費用を直接支払う方法です。

 

リサーチ費用の分離に備えるために、運用機関は現在受け取っているリサーチを検証し、それを受け取り続けるか否かを決定しなければなりません。この決定を下した後、運用機関はそれらのリサーチ費用の計上方法と支払い方法を選択する必要があります。

 

販売業者の確認強化

MiFID 2は、金融商品の組成者とその販売業者に従来よりも厳しい金融商品ガバナンス要件を課しています。運用機関は各ファンドのターゲット市場を特定する必要があり、それが最終投資家の適合性要件を構成します。

 

MiFID 2の下では、運用機関と販売業者がより深い関与が必要になるでしょう。ターゲット市場の特定に加え、運用機関と販売業者はファンドが意図した市場の投資家だけに販売され、投資家のリスク特性と投資ニーズに適合していることを確認するために、継続的な監視も実施しなければなりません。

 

より複雑な金融商品を有する運用機関にとっては、既存の投資家層を引き続き自社のMiFID 2ターゲット市場の条件に適合させることが特に大きな関心になります。販売するファンドの種類と、販売・流通方法の監視が義務付けられているため、運用機関は販売ネットワークの強力な監視モデルを考案しなければなりません。

 

準備段階から実行段階へ

MiFID 2は施行までに長い時間がかかっていますが、まだ多くの作業が残っています。最終的な規則と市場慣行が明らかになるとともに、2018年1月の施行期限が刻一刻と近付いています。このため、多くの運用機関は過去数年にわたってMiFID 2に備えてきましたが、今や速やかに準備から実行へと焦点を移す必要があります。運用業界がMiFID 2という「獣」を手なずけようとする中で、重要な施行の年が待ち受けています。

 

資産運用機関のためのチェックリスト

2018年1月に備えてやるべきこと:

  • システムの変更とテストを実施する
  • 既存の手数料体系を査定する
  • データと報告ソリューションを検証する
  • 規則および手順を更新する
  • 商品と販売経路を評価する

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This article was originally published in the 2017 Regulatory Field Guide. The guide features insights from a number of our experts on key regulatory developments that will have the greatest impact for asset managers in the year ahead – and beyond. Visit bbh.com/regulatoryfieldguide to explore the guide.

この内容はブラウン・ブラザーズ・ハリマン・アンド・コー(BBH&Co.)の作成した 2017 Regulatory Field Guideの参考として翻訳されたものです。内容については日本語のみで解釈せず、 2017 Regulatory Field Guideを原文としてご理解ください。また、本翻訳は参考訳であり、翻訳の正確性や完全性を保証するものではないことをご理解ください。