今年のRegulatory Field Guideを読みながら、世界的に有名なフランスの海洋生物学者、ダニエル・ポーリーと彼の著名な論文「Anecdotes and the shifting baseline syndrome of fisheries (漁業の逸話とシフティング・ベースライン症候群」が頭によぎりました。ポーリーは、人の考えは過去の実在データに左右される、という「シフティング・ベースライン」の概念を新たに打ち出しました。彼は、漁業に携わる人々が多くの場合、自分が漁をする水産資源の枯渇を十分に把握出来ていないことを例にとりました。人はもともとの個体数ではなく、今生きている人々の記憶を基準にしてしまうのです。何世代にも渡る乱獲の結果、水産資源が枯渇している状況においても、漁獲量はあたかも健全であるかのように認識されてしまうのです。

 

このシフティング・ベースラインは、現在の運用業界の規制を取り巻く状況にもあてはまるでしょう。ここ数年で規制変更の規模とペースが落ち着いてきたという見方が広がっています。規制に関する公開討論会や協議会は減少しつつあり、金融メディアで連日取り上げられていた頃とは一線を画しています。ただし、変化のペースが緩やかになったのは事実ですが、今後まだ多くの規制変更があるのも事実です。過去8年間の絶え間ない規制変更により、業界が普通だと考えるベースラインがシフトしたのです。

 

運用業界がより高いレベルの規制変更に慣れたということと、今後まだ極めて多くのなすべき事があるということとは別の話です。事実、複数の政策領域についてこの数年間に実施された規制を見直し、改革するよう求める声が上がっています。

 

このような取り組みが進んでいくと、規制変更の新たな時代の幕開けになることは確実でしょう。いずれにせよ、運用業界は近い将来、多くの規制変更に直面することになります。

 

2017年版のRegulatory Field Guideはこれまでで最も多くのBrown Brothers Harrimanおよび運用業界の専門家の見方を取り上げています。読者の皆様が今後の規制関連の課題と向き合う際に、有益な情報となることを願っています。

 

Sean Tuffy

Adrian Whelan

2017 Regulatory Field Guide

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